初陣ーはじまりの町

ササヤレコナーサ

「ササヤレコナーサ」
この聞き馴染みのない言葉は、島根県の西端に位置する津和野という町に由来します。津和野は一般的に「田舎」「中山間地域」「地方」という枠組みで語られる、人口7千人ほどの小さな町です。
私たちはこの町に編集拠点を置くことにしました。

なぜ、津和野町か。
その理由は「この町に偶然出会った」という答えに尽きると考えています。
この町にたまたま生まれ育った人、進学先が津和野だった人、選んだ職場が津和野にあった人、移住先として津和野を選んだ人。日本全国、世界各国に人が集まり、働き、住まう場所は多くあるなかで、津和野にたどり着いたというこの偶然が、ササヤレコナーサを生んだすべてのきっかけです。

昨今、日本中の自治体や企業団体等至るところでまちづくり、地域活性、課題解決という言葉に表現されるさまざまな取り組みがなされています。しかし、こうした取り組みはインターネットや人口知能が期待通りの結果を即座に示してくれるように、すぐに目に見える成果が表れるわけではありません。長い時間をかけてその行動の効果を実感することもあるでしょう。

一方、ササヤレコナーサが大切にしている価値は、その町に訪れたり、働いたり、暮らしたりする私たちが日常的に行っている当たり前の行動。そうした営為が、その街や生活を支えているという視点に立ち、その地域特有の言語、価値観、考え方、仕事、そして人を内包する「文化圏」に焦点をあてることに意味があると考えています。文化は、食事、音楽、ファッション、芸術、学問等、私たちの生活を心地よく、快適なものにするために欠かせないもの。しかしそのあり方は、地域によってさまざまです。

ワーキングホリデーや海外留学、地域みらい留学(高校進学時の国内留学という選択肢)という例にあるように、異なる文化圏に触れる体験
通し、人は学び、成長し、時に人生の歩む方向を決める大きな影響力を持ちます。私たちはこのような体験を伴う行動を「文化圏移動」と名付けました。

文化圏移動
今の自分が暮らす街、仕事、同じ言語や価値観を共有する人間関係から一時的に離れること。

ササヤレコナーサでは、「文化圏移動」体験者が筆を取り、その体験をしたためます。また、書き手として参加してくれる方をいつでも募集しています。今住んでいる地域、遠方から関わっている地域、ずっと忘れられない地域……。その地域で体験したエピソードをぜひ紹介してください。

なかなか移動ができなかった時期を乗り越えた今、世界中の地域への文化圏移動を応援します。

さて、
「ササヤレコナーサ」
そろそろこの意味が気になることでしょう。
この言葉には意味はありません。意味こそないものの、津和野という町を形作る要素の一つです。
津和野町で400年以上舞われている盆踊り「津和野踊り」。その歌詞の一節に登場する合いの手が
ササヤレコナーサです。

♪松の葉越しに出る月見れば 見えつ隠れつ人目をしのぶ(ササヤレコナーサ)♪
♪空にも恋路があるものか(ヨオイヤアナア)♪

※「津和野踊り」の歌詞より抜粋1

きっと津和野の町の大半の人も知らない、意味をもたない言葉。
しかし古くから津和野の夏の盆の夜に響くサウンドスケープとして今も受け継がれています。


町の主要文化である津和野踊りの合いの手から名付けられた本ウェブサイト。
2023年8月15日の盆の日、津和野踊りが舞われる日。日本列島には台風が直撃し、津和野の町も朝から雨が降り注ぐ今日、『ササヤレコナーサ』をリリースします。

ササヤレコナーサ編集長 玉木愛実